◇心の扉〜深い河を越えて

九、光臨

 あかねは床に蹲っていた。
 両手を抱え込み、何かに恐れるように震え始めた。

「いや…。いや…。いやあっ!!」

 明らかに何かに恐怖している。

「幻聴でも聴こえているのかしらね…。」
 小太刀が楽しそうに言い放つ。
「あかねっ!しっかりしろっ!!あかねっ!!」
 乱馬は構わず叫んだ。
「叫んでも無駄ね。この女傑族最大奥義の秘薬、効き始めたら何も聴こえない、感じない。ただ、己の中にある恐怖の幻影に惑わされるだけね…。その恐怖が強ければ強いほど効果があるね…。今のあかね、手篭めにされたときの恐怖心が蔓延するほど記憶に残っているね。あかねに、勝ち目ない。」
 シャンプーはじっとあかねを見据えた。
 彼女の視線の先で、あかねは一人もがき続けた。
 痛々しいほど、床をのた打ち回る。

「やめてっ!いやっ!いやよーっ!!」

 きっと数日前襲われた時はこのような感じだったのだろか。
 あかねは身悶えしながら己に襲い掛かる呪縛に慟哭し始めた。

「どうです?乱馬さま。あかねが苦しむさまは…。」
 小太刀は笑った。
 それから得意げに言い放った。
「乱馬さまがあかねと手をお切りになるのでしたら、助けて差し上げても宜しいことですわよ。」
 そんな言葉を愉快げに並べ立てる。

「けっ!誰がこんな卑怯な手に屈するものか…。」

「そう言っていられるのも今のうちですわ。ほら、天道あかね。シャンプーからその短剣を受け取るがいいですわ。」
 シャンプーは小太刀に促されて手にしていた短剣をあかねに差し向ける。
「シャンプーっ!!」
 乱馬は動かない身体の下から必死で声を荒げる。
「心配ないね…。私は手を下さないね。下すのはあくまで、あかね自身。己の幻影と闘いながら、その手で自分を殺すね…。」
 そう言うと、シャンプーはあかねに短剣を突き出した。
 
 あかねは一人芝居を続けるように、乱馬の向こう側で一人苦しみ続ける。 
 そこへ差し出された短剣をあかねは虚ろげに眺めた。
「これで一思いに刺してしまえば楽になれるね…。」
 悪魔のような囁きをシャンプーはあかねの耳に差し向ける。暗示をかけたようだ。

「あかねーっ!!」

 乱馬は懸命に彼女へと叫びかけた。
「無駄だと言っているでしょう?」
 小太刀が勝ち誇ったように言った。
 右京はただ黙って乱馬の居る方を見詰めていた。

(くそっ!このままじゃあかねを守りきれねえっ!!)
 乱馬は歯ぎしりしながら短剣を持ったまま放心しているあかねを見詰めた。
(何か手はねえか…。離れていても彼女に伝わる手が…。)
 乱馬の額からは汗が滴り落ちた。

 あかねは震える手で短剣を見詰めていた。
「そうね…。そのまま剣を握って、胸に押し当てるね…。」
 シャンプーが優しげに誘導し始める。
 あかねはそっとその言葉通りに短剣を握り返した。

「さあ、そのまま一思いに…。貫くね。そうすれば楽になるね…。」
 シャンプーは囁き続けた。

「惑わされるなっ!あかねっ!おまえには俺が、俺がついているって言ったじゃねえかーっ!!」
 乱馬は叫ぶと、全身であかねに向かって「気」を放った。リボンに束縛されて、手は挙げられない。だから、身体から気を放出させた。

 溜められていた乱馬の気は、空気を振動してあかねに伝わる。

「見苦しい足掻きを…。」
 その有様を見て、小太刀は吐き捨てるように言った。

 ビリビリと伝わる気の振動。あかねは、はっとした表情を一瞬差し向けた。
「あかねーっ!!心を開けっ!閉ざされた心の扉を自分の手で開くんだーっ!!」
 乱馬は動かない身体から己の気を放出し続けた。何度も何度も。
 気はその度に、空気を揺らめかせながらあかねに跳ね返る。

「誰…。」
 あかねの口が微かに動いた。

(あかねっ!俺に気づけっ!あかねっ!俺はおまえの傍に居る。思い出せ。俺のことを。幻影なんかに負けるんじゃねえーっ!!)
 魂を搾り出すように、乱馬は気を振り絞って放ち続けた。

 一人ぼっちで恐怖に暮れていた心。そこへ流れてきた暖かくも厳しい気。
「誰、誰なの?そこに居るのは…。」
 あかねは流れてくる気をまさぐった。
 己が知るこの暖かい気。いつも守り、包みそして叱咤激励を繰り替えす大きな気。閉ざされた闇の向こうに扉が見えた。
「ドア?」
 あかねは手を差し伸べた。
 ノブをそっと開けてみた。
 すると深い闇が充満している。思わず扉を閉ざそうとした。
『ダメだっ!開けっ!心の扉を。あかねっ!!』
 向こう側で声がした。
 閉めたいという心とその声が頭で葛藤を始める。
『あかねっ!俺を見ろっ!俺を感じろっ!俺はいつもおまえの傍にいるじゃねえかっ!!何を恐れている。何も恐れることはねえ。二人一緒なら…。』
 声は心ヘ真っ直ぐにこだました。
「二人一緒なら…。」
 静かに心で反芻してみた。
 その言葉の真意を確かめるために、あかねは閉じかけた扉を少し開いてみた。
 闇の向こうに人影が見えた。おさげ姿の凛々しい少年。その真摯な瞳が闇の中からぽっと浮かび上がった。
「乱馬…。」
 あかねは思い出した。いつも傍にある彼の存在を。
「乱馬っ!!」
 彼女は目覚めた。
 心の扉は開け放たれた。
「あかね…。待ってたぜ。」
 乱馬はにっこりと笑った。
 そして懐かしい乱馬の向こう側に唸りを上げながら立ちはだかる黒い闇を見た。
「あかねっ!おまえの心の刃で、そいつを、幻影を打ち破れ…。おめえならできるはずだ!俺は常におまえの傍に居る。忘れるなっ!!あかねっ!」
 耳元で乱馬の声が響いた。
「うん…。あたし、やる。乱馬、あんたを信じてる。あなたはいつもあたしの傍に居る。だから、あたしは…。あたしは負けないっ!!!絶対負けないっ!」
 
 あかねは飛んだ。
 手にしていた短剣を振りかざし、己に立ち向かう暗い闇を打ち払うために。扉の向こうへと飛び出していった。

「やあーーーーッ!!!」

「いやあっ!」
 シャンプーは叫んだ。己に向けられた刃に。
 彼女の身体の傍をあかねが突き出した刃が通り抜ける。辛くもそれを避けたシャンプーの戦闘着が肩先から破れた。
「シャンプーッ!!」
 小太刀が絶唱する。
「今だっ!」
 乱馬は己を呪縛していたリボンを手繰り寄せると、小太刀に向かって鉄槌を打ち下ろした。

「乱馬さまっ!何故…。」

 小太刀はスローモーションを見るようにゆっくりと後ろへと薙ぎ倒されていった。

「見事や…。乱ちゃん、あかねちゃん…。」
 右京がきりっと言い放った。
「私たちは負けませぬ…。」
 小太刀がふらっと立ち上がろうとしたのを彼女は静かに制した。
「うちらの負けや。潔う諦めっ!見いやっ!乱ちゃんとあかねちゃんの間には、何者も入り込む隙なんてあらへん。武道家らしく、素直に負けを認めるんや。」
 小太刀とシャンプーはその場に平伏すと、悔し涙に泣き濡れた。


 床に倒れ伏す二人の少女。その傍らで乱馬は立ち上がった。
 ゆっくりとあかねの方に歩み寄り、黙って両手を差し出した。
 あかねは肩で息をしながら乱馬を真っ直ぐに見上げる。
 そしてはにかみながら彼を見返した。
 さあっと道場の穴だらけの壁板から太陽の光が差し込んできた。まるで二人の勝利を祝福するように光が光臨したのである。
 あかねは笑った。それはごく自然な微笑であった。
 「天使の微笑み」。
 誰憚ることなく、二人はじっと見詰めあい、そして互いの想いを確かめるように、身体を固く結び合った。



 
十、結言

「ねえ、早く、早くっ!」
 道先で少女が無邪気にはしゃぎながら後ろを振り返った。
「待てよ…。そんなに急ぐと転んじまうぜ!」
 少年はそう笑って見せた。
 御揃いの浴衣に身を包んで、二人仲睦まじく寄り添う。

 川向こうの神社の、年に一度の七夕縁日。
 あれから数日。少しずつではあるが、またあかねの時が動き始めた。
 あかねは元の明るさを取り戻しつつある。時々忌まわしい記憶に引きずられそうになるようであったが、その度に、傍で彼女を支える逞しい瞳。
 記憶を全て取り去ることはできないだろう。だが、失うばかりではなく、得ることもあった。
 
 人ごみは神社に近づくにつれ、増え始める。夕涼みがてら出てきた人で縁日はごった返していた。
 お参りを済ませて、縁日が立つ参道へと繰り出す。人の流れが行き交いながら押しに押されて歩いて行く。
「乱馬?」
 ふと居なくなった彼に気が付いてあかねは声を出した。
 返事はない。 
 周りの人波が、立ち止まることを許してはくれない。このままはぐれたら落ち合うのは不可能に近い。
 あかねは不安な表情を浮かべた。
 明るさを取り戻してきたとはいえ、一人にはなりたくなかった。また、狙われたらどうしようかという恐怖は、正直言ってすぐに拭い去れるものではなかったからだ。一人で寝入ることもできず、夜のしじまの中では乱馬に縋り付いて眠っている。彼の息吹が傍にあるだけで恐怖は和らいだ。
 乱馬の温もりは少しずつあかねを解きほぐしていった。
 
「乱馬…。」
 彼の名前を呼んでみた。だんだん不安になる気持ちを落ち着けようと、きょろきょろと辺りを見回す。と、あかねは押し寄せる人波に弾かれるように、道端へと押し出された。
 ふうっと溜息を吐く。
 人々は目まぐるしく目前を通り過ぎてゆく。とても波の中へ戻る勇気はなかった。
 困りきった顔を虚ろげに巡らせている、傍らから手をつかまれた。
 ドキッとして見回すと、にゅっとパンダのお面が傍にあった。
「きゃあっ!」
 悲鳴を上げそうになったところで、にやついた顔が中から現れた。
「たく…。突拍子もない声をあげるなよ。ガキみてえに…。」
「乱馬っ!!」
 あかねは物凄い形相で睨んで見せた。
「バカッ!!」
 そう言って飛んでくるビンタ。それをひょいっと流しながら乱馬は言った。
「俺の織姫さまはご機嫌斜めになってしまったのかな?」
 と。
 すっかりからかわれたと思ったあかね。ぶうっと膨れて見せた。
「そんな顔すんなよ。可愛くねえぞ。」
「うるさいわねっ!!」
 顔を見合わせて噴出した。
「良かった、どこかへ行ったのかと思ったわ。」
「たく、ガキみてえにキョロキョロしてよ…。世話が焼けるぜ…。」
「もしかして、どこかでずっと、あたしを見てたの?」
 あかねは顔を引きつらせながら乱馬を見返した。
「ああ。」
 そう言ってにっと笑う。
「意地悪っ!」
 拗ねて見せた。
「ずっと傍に居るって言ったろ。俺は律儀なの。」
 と笑っている。
「あ…そうだ。さっきこれを買ってきた。」
 乱馬はズボンのポケットを漁り始めた。
 ポケットから差し出された小さな紙袋。「上」という文字が赤く書かれていた。どうやら境内で買うためにあかねからひょいっと離れたらしい。
「何?」
「お守り。」
 そう言ってはにかむ。
 ガサガサっとあかねは紙袋を開けてみた。
「これ…。」
 鈴がコロンと鳴って出てきたのは一つのお守り。
「ちょっと、乱馬ぁっ!!」
 お守りを見詰めて、あかねは怒ったような真っ赤な顔を乱馬に差し向けた。
「あん?」
「これって…。」
 あかねは固まっている。
 『安産祈願』。お守りの中央にはそうしたためられている。
 あかねは黙って乱馬を見返した。ちょっと困ったような表情が、乱馬の心をくすぐる。
「だって、他に見当たらなかったし。『恋愛成就』は必要ねえだろ?ましてや『縁結び』も…。それに『合格祈願』も『商売繁盛』も関係ねえだろ?『家内安全』もちょっと違うし…。」
「それでこのお守りな訳?」
「そういうこと。」
 乱馬はポツンと言葉を投げた。
「気が早いんだから。もう…。」
「あん?なんだよ、その引っかかった言い方は。」
「バカッ!わかってるくせにっ!!」
 そう言ってあかねはふっと微笑んだ。それから乱馬の顔を覗き込んだ。

「本当にずっと傍に居てくれるの?」
「当たり前のこと何度も聴き返すんじゃねえ…。約束したろ?」

 言葉の後にさあっと風が通り過ぎた。唇に感じる柔らかな感触。

 コロコロ…。コロコロ…。

 鈴が可愛らしい音を発てた。
 真っ赤になって固まる少女に少年はふっと笑いかけた。

「さ、早いこと行こうぜ。今度は、はぐれないように…。」
 乱馬はそう言うと腕を差し出す。
「しっかり俺につかまっとけ…。」
 はにかむようにそう言うとはふっと空を見上げた。
 自分で言っておいて照れているのだろう。
「うん。」
 あかねは一つ微笑むと、差し出された腕に自分の手を絡ませた。乱馬は黙ってその腕を自分の方へ引き寄せた。

 二人で歩く道は、平坦ではない。だが、確かな未来へと続く。
 夕焼けが笑いながら空を茜色に染めている。
 今日あたり、梅雨明け宣言が出されるだろう。
 きっと明日からは真夏の青い青い、空。




 完


2002年5月 作品


あとがき

 ざっと読んで頂くと分かるとおり、この作品のテーマは「深く傷ついたあかねとそれを見守る乱馬」にあります。

 この作品は、当初「乱馬視点」で書き始めました。
 乱馬を通して彼の視点から書くことは、2002年当時の私には、恐らく一番書き易い表現方法だったと思います。乱馬の視線をフィルターとして書く文章は、己の内実を的確に表現するのに適したスタイルでした。でも、書きすすめるうちに、「果たして安易な視点人称方式で描いてよいのか?」という最初の葛藤が私の中で始まりました。彼の心の葛藤を彼の視点から描くのは容易く、そして、ある一定のレベルで書き下ろせば「らしく」見えます。が、そのまま乱馬視点に頼って書き進めると、本当に伝えたかったことがボケてしまうのではないかという危惧を、当時の私は持ったのでした。
 で、次に考えたのが、あかね視点との混合での創作でした。 途端、それも挫折してしまいました。
 「あかね視点」で書こうとしたとき、傷だらけになったあかねの心情はそう易々と言葉に乗せられたものではありませんでした。
 こんな危機に直面したとき、立ち直れる人間は言葉でぐだぐだ考えることが出来る。だが、あかねの受けた衝撃はそんな陳腐な人称表現で捉えきれるものではないだろう…「何も考えられない「虚」の状態」。おそらくそれがあかねの追い込まれる心理状況な筈。

 乱馬の視線から内容を追うと、伝えたい内容が希薄になる。
 あかねの視点では、完全に枠からはみ出る。

 八方塞がりになった私のとった結論は…「人称表現法」は取らずに、最初から書きなおすこと…でした。

 書きなおした時点で大きく作品の方向性は変わることになりました。

 当初、うじうじと突っ込もうとしていた「心理描写」は、人称視点をやめたことで、ばっさりと切りました…いえ、切らざるを得なかったのです。
 文章を書く時に一番気を遣うのは「流れ」であることは言うまでもなく…。人称視点を止めると、心理描写ほど厄介になるものはありません。稚拙な文章力では、言葉が上手が流れず、澱(よど)むのです。自己嫌悪になるくらい、心理描写は中途半端になり、私の未熟さが浮き出してしまうのです…。試行錯誤の末、心理描写を書き綴っていた部分を、途中でバッサリ削ぎ落としました。

 心理描写をバッサリと切り捨てたことは、当然、作品の基本プロットにも如実に影響を及ぼしました。
 
 最後まで導入部のあかねの描写を散々迷いました。
 あかねが襲われるシーンをどう処理するか。「乱あにおける禁忌」です。他の人にどう受け入れられるかということはこの際一切気にせず書こうとしたのですが…。当時の私にはどうしても、具体的には書けなかったのです。乱馬の想い人である彼女を侵したくないという制御が働いたわけではありません。表現力の稚拙なせいで、納得したものが書けなかったのです。仕方なく、ほとんど描写せず、あっさりと書くことで落ち着きました。削いだ部分は、乱馬の回想シーンに少しだけ挿入しました。
 
 彼女は処女を喪失させられたのか、それとも寸での未遂で終ったのか…。原典版は前者、呪泉洞バージョンは後者の視点を取っています。
 この作品をネットへ掲載するかどうか、かなり迷いました。ある意味、乱あの禁忌(きんき)を犯していますから…。悩み抜いた末、結局、加筆修正を加えて、呪泉洞バージョンとして試作室の奥へ突っ込むことを選びました。

 この作品のテーマはあかねの処女喪失ではありません。純真なまでの二人の愛をテーマに書き下ろしたものです。乱馬の葛藤とあかねの葛藤。そして二人の純愛。私が一番書きたかったことは「妹背」に集約されていると思います。実は、ここを書いているときは、自分でも涙が止まらなかったことを今でも覚えています。

 二人を最終的に回帰させる場所を「道場」へ置きました。「病室」に置くのに抵抗が働いたのでした。 
 私は彼らが回帰する「聖なる場所」は「道場」であるとずっと考えているからです。
 彼らが武道家として出会ったのは天道家の中心にあるこの道場。ここで組み合い、そして縁を結ぶ、そんな聖域として道場を位置付けたものが、実は私の作品世界には多いです。「蒼い月と紅い太陽」もそのポリシーに沿っています。

 で、二人が肉体的にも精神的にも結ばれる「永遠」が、第十話に入る予定でした。これを入れると心理描写も引き締まり、作品全体に広がりを持つことも分かっていました。乱馬があかねを「妻」として求め、そしてあかねも怖がりながらも少しずつ「男」としての乱馬を「夫」として身体へ受け入れてゆくシーンを、濃密な心理描写を入れながらじっくりと書く予定でありました。
 が悩み抜いた末、結局「永遠」は書かないことで物語を終結させました。書いたのを削ったのではなく、また書けなかったのでもなく、試行錯誤の末、敢えて書かないことを選択をしたのでした…。

 手法や描写、それから掲載に、これほど真剣に悩みぬいた作品も珍しいです。正直今も迷っているのでありますが…。
 「夏幻想」のR作品「射干玉」を、別天地へ全話掲載するに当たり、「心の扉〜深い河を越えて」という原題の作品へ戻して掲載させていただくことにしました。
 「射干玉」が長い間止まっていたことと、この作品を原典版で掲載しなかったことは、同じ根っこで悩んだことに由来しています。どちらの作品もあかねちゃんが惨い目にあわされていますから…。

 最後に、この作品の原典版に冠している副題名の「深い河を越えて」は、賛美歌第二編の「深い川を越えて」という黒人霊歌から取ったものであることを白状しておきます。書いている最中にその一節が頭の中をぐるぐると駆け巡っていたので…。



2012年6月15日 記



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