◇DARK ANGEL 3.6
 インテルメッゾ〜癒しの時間(あかね編)



 深遠の闇がゆっくりとあたしの腕を掴み取る。ぞくっとする間もなく、心ごと身体が凍りつく。
『逃しはせぬっ!おまえも無に帰れ!吾らとともに…。』
 音のない声が脳内で響き渡る。男声でも女声でもない闇の声。
 あたしはもがく。その闇に溺れそうになりながら。手足をバタバタと動かし続ける。
『無駄だ…。おまえは独り。この孤独の闇の中…。』

(いやだっ!いやだーっ!!)

 声にならない叫びを全身であげる。

「ダイジョウブダカラ…。オマエハ、ヒトリジャナイ…。」

(誰…。あたしに囁きかけるのは。)

「アカネ…。ホラ、俺ノ鼓動ニ同調シテ…。」

(鼓動?)

 あたしは暗がりの中で耳をすます。

 トクン…。

 どこかで心臓の鼓動のような音が響いてくる。

 トクン、トクン…。

 心地良い音。
(光…?)
 そうだ。その音の方向に柔らかな光を感じた。
 母の胎内にいるような、安心感。あたしを包み込む癒しの力。そんな温かい光。
『おまえは独りだ。闇の中へ…。来い!引きずり込んでやる…。』
 また冷たい声が響く。
 感じていた光がふっと途切れる。びくつくあたしにまた違う声が囁きかける。力に満ちた男性の声。張りのある強い、それでいて懐かしい声。
「あかね…。闇に惑うなっ!鼓動を感じろ。俺の鼓動を…。」
 だんだんとはっきりと聞こえてくる声と心音。

「お願い、あなた。あたしを離さないで。」

 あたしは全身全霊の力をこめて、その声の主へと叫ぶ。

「離すものか…。おまえは俺の半身。だから絶対に離すものか!」

 満ちてくる眩いばかりの光。
 その光に導かれるように、あたしはふっと目を見開いた。

 目の前には厚い胸。そして頬の上から漏れる柔らかい吐息。
「あかね…。」
 あたしを見詰める柔らかな二つの瞳とぶつかる。
 怖い闇の夢はあたしに寝汗をたっぷりとかかせていた。何も身に纏わない姿でしっかりとその胸の中に守られるように抱かれている自分の姿に、少し戸惑いを見せる。
 と、背中に回されている手がぎゅっとあたしを引き寄せる。

 トクン…。トクン・・・。

 夢の中で響いていた鼓動が、また流れ込んでくる。

「ん…。」
 まだ寝ぼけた吐息を吐きながら、あたしは目の前の胸へと顔を埋めた。

「あかね…。まだ闇がおまえを苦しめてるのか…。でも、大丈夫。俺がずっと抱いててやるから。」
 そう言いながら手串で髪の毛をすくう。柔らかな優しい手。
「おまえの闇が消えるまで、ずっとこうやって傍に居るから…。安心して眠れ。」
 力なく微笑むとあたしはすっとまた目を閉じる。
 目を閉じるとまだ向こう側に闇が大口を開いているのがわかった。でも、もう平気だ。傍にある鼓動があたしを守ってくれるから。この人が傍に居る限り、あたしは闇には飲み込まれない。
 あたしの心の奥に広がる闇が少しずつ、本当に少しずつ、浄化されていく。この柔らかな光に癒されるように。








 ダークエンジェルの超力が覚醒した後は、こうやってあたしは広げた心の闇を彼によって癒される。ゼナの暗黒の魂を無へと帰す度に、襲う孤独という闇の傷。その傷口を優しく癒してくれるのが、パートナーの乱馬だった。
 この超力については、何故あたしの中に覚醒したのか、そして何のために発動するのか。実は、当のあたしですらわからない神秘な超力だった。 ただわかっているのは、乱馬と共に発動するということだけ。乱馬があたしの超力を解放し、そして治めるのだ。この超力を解放する度に受けるあたしの傷を彼は余すところなく癒してくれるのだった。
 この超力が目覚めてまだ数年。あたしには強大すぎるこの超力をコントロールし統べる者が乱馬であった。

 この超力をあたしに与えた者は、彼はあたしの宿命の人だと言った。その言葉が耳に残っている。他は忘れてしまったというのに…。

 あたしの許婚であり、エージェントパートナーの乱馬。同じ年のクセに、かなり年上に思えることもある。エージェントとしても、超一流で、信じられないほどの長けた能力の持ち主だった。乗り越えてきた修羅場の数が違うのだろう。勿論、質も。
 あたしの中に目覚めたダークエンジェルの超力。それを知る者はごく僅かの人間だけだ。エージェントの隠れ蓑になっている、あたしの実家の「天道運送会社」の社員たち、その実、イーストエデンの構成員たちと、一握りの連邦政府の人間と、ほんの数えるだけの。
 「ダークエンジェル」の超力は地球連邦当局の超級極秘事項扱いだった。



「あかねちゃんは、すっかり調子戻ったようね。」
「まあね…。」
 かすみお姉ちゃんはあたしを見てにっこりと微笑んだ。
「そりゃあ、帰還の船の中、ずっと彼が寄り添うように癒しの気を送り続けてくれたんだから、当然でしょう。」
 口の悪い直ぐ上の姉、なびき姉さんが意味深に笑う。
 この前の任務で、あたしは最初のエージェントパートナーだった藤原晃に巣食ったゼナの闇を無へと帰していた。脳内の深くに封印されていたあたしの忌まわしい記憶と共に晃は無へと帰っていった。
 手元に残されたのは「エンジェルストーン」。晃の残した心の涙だと乱馬は言ったが、それが何なのかはわかららなかった。帰ってきてから、かすみお姉ちゃんが随分と化学分析したりデーター解析したりしてみたけれど、結局はただの硬質の一種だろうという結論に達した。あたしが握っていた時よりも、分析のために一回り小さくなったこの白透明の美しい石は、いつも部屋の片隅にちょこんと立てかけて置いてある乱馬人形の首へとつらさげておいた。
「何で、あんな奴の残した石を俺人形の首先から吊り下げてやがんだ!」
 と嫌そうな顔を乱馬が投げたが、
「いいじゃないの。大人気ない!」
 と素っ気無くあしらった。
 乱馬には悪かったのだけれど、無下に棄てるわけにもいかないと思ったのだ。晃が残した形見であれば、尚更に。
「へっ!俺人形と同等の扱いってーのが気にくわねえなっ!!」
 乱馬は随分とはっきりと物を言った。
「同等じゃないわよ…。過去のメモリアルだもの…。この石はね。でも、あんたは違うでしょう?」
「そうだな…。今を一緒に生きてる俺たちだからな。」
 わかったのかわからないのか、そこで強引にキスを要求してくるのは、乱馬らしいリアクションだった。
 今は任務明けの休暇中で一応非番。非番のプライベイトタイムだと結構、本能の赴くまま、素直に接してくる彼だった。

「ちょっと待ってよ!乱馬。」
「あん?」
 寄せられた唇をふっと遠ざけた。
「あれ…。」
 と小さく促す。
「げっ!」
 その視線の先には、こちらを好奇の目で伺う円らな瞳が二つ。
 あたしと乱馬のクルーに研修生として入っている連邦局のエージェントの卵、源ナオム君だった。
 グリーンメイズ号に乗り込んでいた彼は、連邦特務局の命令でこの天道コーポレーションへ研修生として暫く預かることになったのだった。当然、彼はあたしたちが不通の運送会社ではなく、それを隠れ蓑にしたイーストエデンの特務部隊だということまでは知っている。でも、あたしと乱馬の隠されたダークエンジェルの超力に関しては何も知らないのだ。


「わかってると思うけど、あの子の前では、ダークエンジェルの超力を解放するのはご法度ね。」
 と、最初になびき姉さんから言い渡されている。
「わかってっけど…。その間に危険な任務が舞い込んだらどうするんだ?」
 乱馬は意地悪く姉さんに問い返していた。
「ま、暫くはこっちへはそんな危険任務は流れてこないわよ。あたしの方で適当にあしらっておくから。それより、いいわね、研修の二ヶ月間、みっちりと頼んだわよ。親代わりの世話。」
「何なんだよ、その親代わりっつーのは。早い話がガキの世話だろうがっ!!」
 というわけで、ナオム君は殆どあたしたちと一緒に行動している。
 それをあたしは思い出したのだ。


「ねえ、乱馬…。ナオム君ってまだ十歳そこらなんでしょう?」
 あたしはキスを止めた目を彼に向けると言った。
「ああ、そうみたいだな…。グリーンメイズ号でも一番年下クルーだったしな。」
「だよね…。」
 一呼吸置いてあたしは思ってることを乱馬に言った。
「だったらさあ…。やっぱりこういうの不味いんじゃない?」
「あん?」
 何を言い出すかと乱馬が目を見開く。
「だから、むやみやたらに発育途中の青少年に刺激与えちゃあ…ね。」
「あんだよ…。その歯にコロモが引っかかったような言い方はっ!」
「ナオム君が研修でこの基地に居る間はさあ…。」
「やだっ!」
 何を言いたいかわかったらしく、乱馬はさっと拒否権を要求してきた。
「乱馬っ!!」
 あたしの顔がむっとしたら、彼はやれやれと溜息を吐いた。
「わーったよ!言うことききゃあ、いんだろうっ!」
 半ばヤケ気味に言い放つ。
「おめえ、言い出したら聞かないもんな。はああっ…。」
 思いっきり漏れる溜息。何よそれ。
「で、おまえは我慢できるんだろうな?」
「我慢って?」
「その…ムラムラ、ドキドキをだ…。」
「ばっかね。当たり前じゃない。これも任務なんだからさあ。後輩を育てるための。二ヶ月なんてあっと言う間よ、あっと言う間。」
「だろうかねえ…。言っとくけど、特務任務カレンダーの二ヶ月だぜ。じゃねえと、地球暦の日数だと一度か二度のクルージングですぐ経っちまうからな。」
「って言ったって、なびきお姉ちゃんが言うには、簡単な運送任務しかあたしたちには当てないって言ってたから、殆ど特務任務カレンダー。イコール・地球暦じゃないの?」
「だといいよな!」
「剣があるわねえ…。ははあん、乱馬君は我慢ができないとか?」
「あほっ!俺だって任務中は控えてるわいっ!」
「だったら、ちゃんとおあずけできるわよね?」
「……。まあな…。」
 何よその沈黙。
「じゃ、約束ね。」
 
 と半ば強引に決めてしまった。


「あんたさあ、乱馬君と何か約定結んだんだって?」
 となびきお姉ちゃんがくすくす笑いながらきいて来た。
「まあね…。ナオム君の研修に支障をきたさないようにね。だって、まだ子供でしょう?」
「よっくあの乱馬君が承知したわねえ…。」
「だって任務だもの当然よ!」
「偉いわ、乱馬君とあかねちゃん。」
 かすみお姉ちゃんはにこやかに笑いかけてくれる。
「まあ、それもいいけど、あんたたちの任務に支障きたさないようにしてね。」
「気に食わないわね。お姉ちゃん。その言い草。」
「ま、何事も程々が一番ってこと。」

 なびきお姉ちゃんはやっぱり物事には長けていたと思う。

 ナオム君は実に優秀なエージェントの卵だった。一緒に何度か飛行して、その知識力、判断力、行動力、分析力はエリートとしての素質は十二分にあった。あのくらいの年頃の頃、あたしはあんなに機敏に動けなかったし、優秀でもなかった。何でもかんでも卒なくこなす。あれだけ渋っていた乱馬も一目を置くくらいの健闘ぶりだった。
 宇宙ではあたしと乱馬が交代で仮眠を取りながら、彼の行動を見守った。だから、自然と今までよりもすれ違うことが多かった。無人飛行の時も、一緒にカプセルになんてことも当然しなかったし、非番の日も自然な距離を置いていた。ちょっと寂しいなと思うこともあるにはあったけれど、四六時中近くには居られるんで、あたしはちゃんと我慢できた。

 でも…。

 季節の変わり目に失敗したのか、それとも、ナオム君が入ったことで、普段使わない気を使い果たしたのか。珍しく乱馬が不調を訴えたのだ。

「あんた、顔色悪いわよ…。夜更かしでもしたの?深酒?」
 その日の朝は、起き抜けから様子が変だった。
「バーロー。そんなんじゃねえやっ!」
 いつもは馬車馬のように食べる朝の食事だって箸が進まない。
「もしかして、宇宙風邪でもひいたんじゃないの?」
 なびき姉さんが笑った。
「悪いこと言わないから、東風先生のところで観てもらってきなさいよ!そんな様子じゃあ、今日の飛行は無理っぽいわよ。」
 とあたし。
「そだな…。東風先生んとこへ行って来るかな…。」
 足元が心なしかふらついて見えた。で、それっきり彼は乗務には戻らなかった。



「ええーっ!乱馬ったら入院病棟送りになったの?」

 意外な展開にあたしの方が驚いたくらい。
 ただの疲れくらいで、薬を処方してもらって終わりだと思っていたから。
 もしかして、精密検査の結果、どこか異常でも見つかったんだろうか。それとも、細菌感染?
 
「はあ…。予定飛行が狂うわね、これは…。家は零細企業だから、たく…。」
 なびきお姉ちゃんは乱馬よりも仕事の心配。
「あんたも乗務は無理だわね…。その様子じゃあ。」
 呆けているあたしを恨めしそうに見上げると、
「はあ、誰に代わりに飛んで貰うかなあ…。やっぱ、お父さんかなあ…。」
 頭をかきむしりながら遠ざかる。自分では絶対行かないなびきお姉ちゃん。
「あ、そうだ。後で東風先生が医療センターにいらっしゃいって言ってたわよ。」
 と言い残して。

 お姉ちゃんに言われたとおり、あたしは東風先生のもとへと急いだ。
 あたしを呼ぶなんて、やっぱり何かあるんだ。
 なびきお姉ちゃんは事務的なこと以外は何も教えてくれなかったから、深刻な顔をしていたと思う。
「あかねさん、大丈夫?」
 傍でナオム君も一緒に心配げに見守ってくれる。彼も呼ばれたわけではないけれど、あたしを独りにするのは心配だったのだろう。進んで付き添いを買って出てくれていたようだ。
 グインと医療センターの自動ドア。消毒のためのエアカーテンを通り抜けると、東風先生の居室へと入った。

「やあ、いらっしゃい。」

 いつものポーカーフェイスがあたしを出迎える。

「あの…。」
 あたしが間髪入れずに聞こうとすると、あえて先生はそれを制した。
「ナオム君、君は呼んでないよ。」
 東風先生が笑いながら問いかける。
「でも、あかねさんが…。」
「いいから、これは乱馬君のパートナーのあかねさんの領分だ。君の出る幕じゃないよ。」
 柔らかだがキビッと言い放つ。
「でも…。」
「心配なのはわかるが、君は戻りなさいっ!」
 東風先生の眼鏡がキラリと光る。いや、それだけではない。
 先生はおもむろに後ろの衝立に隠していたベッティーさんをにゅっと突き出した。
「わっわっ、わっかりましたーっ!!。」
 彼は大慌てでと部屋を出て行った。
「あはは…。彼はどうもベッティーちゃんが苦手なようだ。こんなに美人なのにねえ。」
 東風先生が悪戯っぽく笑った。
「ナオム君みたいな聡明な子がベッティーさんが怖いだなんて…ありえるかしら。」
 と苦笑いをすると、
「誰だって、苦手の一つくらいはありますよ。乱馬君が猫を苦手なようにね。あかねちゃん。」
 と、東風先生は笑った。

 もしかして、あたしの緊張を解くほぐすために、わざとそんなことを言って和ませようとしているのかしら。
 そう穿(うが)ってしまった。

 あたしは、ぐっと手を握り締めた。そんな様子からも、乱馬の事態が悪い方に向いているのじゃないかと心細くなっていた。

「で、乱馬君のことなんだけどね…。」
「は、はいっ!!」
 思わず大声。
「わーびっくりした。そんなに大声あげなくてもいいよ…。そんなに緊張しなくても…。」
 先生はふっと微笑んだ。
「覚悟はできてますから。」
 あたしは震えながら言った。

「あん?何か勘違いしてないかな…。僕はただ、乱馬君に特効薬を処方してあげようと君を呼んだだけなんだけど…。」
「え?」
 何と言わんばかりに顔を上げたあたしに先生は笑いながら言った。
「だから、特効薬だよ…。彼にとって一番のね。」




 それから数分後、あたしは彼の病室の前に立っていた。医療センターのスイッチ一つで飛ばされたのだ。
 このドアの向こう側に彼が居る。ドアノブにそっと手を伸ばす。

「誰だっ?」
 きつい声が響いてきた。今にも攻撃しそうな勢いで睨んでいる彼。獣の目だ。
 たく、もう…。相変わらず、緊張感だけは保ってるのね。病人のクセに。
「やだ、そんなに怖い顔しないの。」
 それを軽く流すようにあたしはにっこりと微笑みかけた。できるだけ柔らかく、可愛らしく繕って。
「あ、あかね?」
 突然表れた天使に俺は拍子抜けて声を上げた。

『いつもは君がやってる役目をあかねちゃんに担ってもらうだけだから…。そう、あかねちゃんが特効薬。この後は君の癒しの時間…。ゆっくりね。』
 
 東風先生が彼に話しかけていたモニター画面。意味深な笑顔を残して、ブンッと途切れた。

 何が何だか訳がわからない乱馬が、困った顔をあたしに手向ける。
「おめえ、だけど、ここは医療病棟だぜ…。何しに…。」

「だから東風先生、あたしが乱馬の特効薬だって言ってたでしょう?」
 と言いながら柔らかく笑ってみた。
「治療たって…。」
「ほら、いい子だから。」
 いつもとは違って今回はあたしの方がリードしている。ちょっと優越感。
 軽く唇を合わせると、目をぱちくりと見開いた顔。可愛い…。

「何シャチホコばって、固くなってるのよ。乱馬らしくないわね。」

 と言葉を投げてみる。
 それと呼応するように伸びてきた逞しい腕。いつもはあたしが抱かれるのに、今日はあたしが引き寄せる。
 
「あかね…。」
 そっと象る声。返事の代わりに口付ける。

 あたしが闇に苛まれている時、いつも優しく見守ってくれる乱馬。あたしが彼を必要なように、彼にもあたしが必要なのだ。今のあたしは彼を癒す特効薬。

 ねえ…。
 宇宙の闇は暗い。
 でも、二人ならば怖くはない。
 だから、いつまでも一緒に、この暗闇を飛ぼうね。
 あたしと乱馬の背中から、黒い羽が広がったような気がした。
 そのまま翼を休めながら暫し淡い夢の世界を漂う。
 あたしの闇はあなたが癒す。
 あなたの闇は……あたしが癒す。





 翌朝、医療センターの出口ですっきりした顔の彼があった。

「さあ、今日も頑張って飛ぶぜーっ!!」
 本当、単純なんだから。
 ふっと気を緩めたあたしに、彼は口付けをひとつ。
 こらっ!ナオム君がこっちを見てるでしょっ!!
 ま、いいか。おはようの軽いキスくらいは。

 でも、副作用にはご用心。良く効く薬の処方の後は。ね、乱馬。



 完




一之瀬的戯言
 殆ど脳内が風邪の菌でやられて壊死寸前で書いておりました。
 天使が薬になって、副作用が・・・。頭腐りかけてるかな。
 くどいようですが、この作品の乱馬とあかねは結婚はしていません。この時代の結婚には「子孫をす」という重要な概念がありますので、任務の履行上、避妊している彼らは「結婚」という形はまだとっていないとご理解ください。今更ですが。その辺りのことはみっちり、今後のの展開で書く予定です。(あくまでも予定です。)
 そういえば、義母がこの秋、風邪薬の副作用で救急車で運ばれて入院したそうな。私も薬疹があるので風邪薬は殆ど飲めません。情けない話ですが高熱出たら座薬でさげます。産褥熱も抗生物質使えずに座薬で治された人(苦笑)
 この時の風邪のへたり中に、しっかりDA4「闇の狩人〜追憶編」のプロットを脳内でまとめ書き上げました。乱馬とあかねの過去、ダークエンジェルの覚醒時のことが明らかになります。お楽しみに。


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